スポーツと心拍数は密接に関わっています。心拍数とは心臓が1分間に動く回数で、手首や首筋に指を当てて測ったり、アップルウォッチやその他のハートレートモニターなどの機械で正確に測定することができます。口や鼻から肺に酸素を取り込み、血液中に吸収した後、心臓の拍動によって全身に酸素を供給します。
安静時心拍数と運動時心拍数
「安静時心拍数」とは、身体を動かさずにじっとしているときの1分間あたりの脈拍の数です。
安静時心拍数は1分間に60〜100くらいで、年齢や活動量によって幅広く個人差があります。陸上の長距離選手をはじめとした、持久力の能力に特化したアスリートは「スポーツ心心臓」と呼ばれ、安静時心拍数が30台にもなります。安静時心拍数が60以下だとスポーツ心臓と呼ばれます。
これは、トレーニングにより酸素の取り込みが効率化するとともに、1回の心臓の拍動で酸素を送る能力が高まっていることで起こります。
「運動時心拍数」とは、身体を動かしているときの心拍数です。動くと心臓がドキドキすると思います。身体を動かすための酸素を取り込もうとして、息がハーハーし、心臓がドキドキします。先ほど述べた「スポーツ心臓」のアスリートは酸素の取り込みの能力が高いので、高い強度の運動をしてもハーハードキドキが少ないです。
有酸素運動と無酸素運動
有酸素運動と無酸素運動というものを見たり聞いたりしたことがあると思います。
身体はATP(アデノシン三リン酸)という身体を動かすエネルギーを生み出します。このATPのつくる過程が3パターンあり、それを大きく2つに分けたものが有酸素運動と無酸素運動になります。この詳しい解説は今回は割愛させて頂きますが、簡単に言うと
- 有酸素はエネルギーを産み出す時に酸素を必要とするもの。
- 無酸素はエネルギーを産み出す時に酸素を必要としないもの。
無酸素運動は、体内に貯蓄されたエネルギーを短い時間で大きなパワーを出すときに使われ基本的に使い切ったら終わりです。100mダッシュを同じ速度で何本も出来ないのがイメージしやすいと思います。
有酸素運動は、外にある酸素を取り込みエネルギーにするのでかなり長い時間動くことが出来ます。
心拍数とトレーニング
運動の負荷が高いと心拍数は増え、運動強度が低いと心拍数は減ります。この心拍数をモニターして、トレーニングに活用します。
最大心拍数=220-年齢(歳)
最大心拍数とは心臓にかかる負荷が最大の時に、心臓が動くことのできる1分あたりの心拍数の最大数値のことです。
この最大心拍数の何%の負荷でトレーニングすれば、どういう効果が得られるかということが研究で明らかになっています。そしてどのスポーツも世界中で心拍数のモニタリングが活用されています。
練習と試合を同じクオリティに
なぜトレーニング中の心拍数をモニタリングするのでしょうか。
それは試合で求められる技術・戦術以外のクオリティを確認するためです。練習中は基本的にコーチの指導や、自分のプレーに集中するのでフィジカルの能力は後回しです。
しかし試合で求められるのは技術・戦術以外にも、相手を上回るアスリートとしてのフィジカル能力が必要不可欠です。
筆者の経験だと、試合中の負荷が一番高く、試合が一番のトレーニングと感じることが多くありました。
またコーチ陣も選手に適切な負荷をかけられているのか、戦術・技術と並行してフィジカル面を鍛えることが出来ているのか、確認することが出来ます。
ひと昔前は、技術、戦術、体力を別々で鍛えることが主流でした。そこからたくさんの研究や一流指導者の考えが発信され、より試合の負荷に近い、もしくはそれを上回るトレーニングを、プレーを行いながらすることがいいのではないかという風になってきています。
まだ多くの賛否両論が存在しますが、選手にとって一番良いトレーニングを与える試行錯誤を続けるとともに、選手が自分で判断できるようにしっかりとした知識を与えられるように発信をしていきたいと思います。